イギリスの歌手メリー・ホプキン(Mary Hopkin)が1968年(昭和43年)に歌って大ヒットした「Those Were the Days(邦題:悲しき天使)」。私が初めてこの曲に出会ったのは、1973年(昭和48年)の夏のことだった。
兄が大学1年、私が高校1年の夏。群馬から親戚(叔父叔母, 従姉妹たち)が長野に遊びに来た時に、みんなで新潟県上越市の谷浜海水浴場に出かけた。
その日は昼過ぎまでみんなと浜辺で遊んだあと、従姉妹たちは長野に帰って行ったが、私たち兄弟だけは残ってテントで一泊した。熱くなった砂浜の上にテントを張って、虫の侵入を避けながら寝るのは、中々しんどかったが、なんだか大人の仲間入りをした気分で、ちょっと嬉しかった。
この時の写真は手元には一枚も無い。上の写真は現在の「たにはま海水浴場」だ。テントは出入口が1面だけ開くタイプ。底面シートとは分離していたので、虫が入らないようにするのが大変だった
問題は翌日だ。昨日まで大勢で遊んでいたのが、兄弟二人だけ。波打ち際でバシャバシャやっていてもすぐ飽きる。仕方なく砂浜で寝転んで肌を焼いていた時に流れてきたのが、か細い声の日本の女の子が歌う10曲くらいの歌で、これが何度も何度も繰り返すものだから、すっかり耳にこびりついてしまった。
しかも、中には哀愁のこもった歌もあり、聴いているうちに無性に寂しくなってしまったのだ。どうやら兄も同じ気持ちだったようで、「帰るか?」「うん、帰ろう」と、テントをすぐに片付けて長野に帰った。
自宅に戻ってから、気になっていたその曲を探しに善光寺下のレコード店に兄と二人で出かけた。
今となってはどうやって探し出したのか定かではないが、どうも浅田美代子のLPアルバム「赤い風船」がそれらしいとわかった。悩んだが、多分これで間違いないはずだと二人で確信して購入した(兄が😁)。「赤い風船」を含めて全部で12曲。家で聴いてみたら、確かに海水浴場で耳にこびりついた12曲だ。やっと見つけたとわかった時の嬉しい気持ち、今でも覚えている。
どの曲もみんな口ずさめるくらい好きだったが、特に好きだったのは「悲しき天使」。哀愁のあるメロディと、" こがらしのまちをゆく ひとりぼっちのわたし… "という歌詞。浜辺にいた時の寂しい気持ちがよみがえるのだ。
A面には、後々大ヒットした「赤い風船」を含め筒美京平他作曲の6曲が、そしてB面には、外国のヒット曲のカバー6曲が入っている。赤い四角が「悲しき天使」の歌詞だ
「悲しき天使」が、メリー・ホプキン(Mary Hopkin)が歌った「Those Were the Days」のカバーだと知ったのは、だいぶ後になってからのことである。更にその大元の原曲は、20世紀初頭のロシア語の歌謡曲「長い道を」だということを今回初めて知った。
「Those Were the Days」は「そんな時代だった、あの頃は良かった」と、昔を振り返って感傷に浸るような意味である。邦題は、訳詞の内容を少し変えた上で、日本人の好きなヒットしそうな題にしたのだろう。
今回改めて調べてみたら、浅田美代子のLPアルバム「赤い風船」が発売されたのは1973年5月。ということは、海水浴場では出来立てほやほやのLPレコードをスピーカから流していたのだろう。
そんな思い出の曲「悲しき天使」の原曲「Those Were the Days」を今回和訳してみることにした。
まず初めに、メリー・ホプキン(Mary Hopkin)の歌う「Those were the days」」を聴いてみよう。
⚫︎Mary Hopkin 「Those Were The Days」
(4番の歌詞まで全部歌っている。歌詞なし)
⚫︎Mary Hopkin 「Those Were The Days」
Mary Hopkin「Those Were The Days」on The Ed Sullivan Show
(1968年10月27日のThe Ed Sullivan Showに本人が出演した時の動画。1,3,4番を歌っている。英語歌詞付き。La La Laでなくて、Dai Dai Dai❓)
それでは、懐かしの英語の歌を読む(19) スタート!
Those Were The Days
1番
Once upon a time there was a tavern
むかし、ある酒場でのこと
Where we used to raise a glass or two
私たちそこによく通ってグラスを傾けたわね
Remember how we laughed away the hours
思い出すわ 何時間も笑い続けたこと
Think of all the great things we would do
二人で素晴らしい夢をいっぱい考えた
★
Those were the days, my friend,
そんな時代だった
we thought they'd never end
終わりなんてないと思ってた
We'd sing and dance forever and a day
いつまでも歌い踊り続けて
We'd live the life we choose,
自分たちで選んだ人生を生きて
we'd fight and never lose
闘っても決して負けない
For we were young and sure to have our way
私たちは若く 自分の道を確実に歩んでいたから
La La La ……
2番
Then the busy years went rushig by us
それから 忙しい日々はあっという間に過ぎて
We lost our starry notions on the way
キラキラ輝いていたあの夢も 途中で見失ってしまった
If by chance l'd see you in the tavern
もし偶然、あの酒場であなたを見かけたら
We'd smile at one another and we'd say
お互いに微笑んで こう言うでしょう
★繰返し
3番
Just tonight I stood before the tavern
ちょうど今夜 酒場の前に来てみたけど
Nothing seemed the way it used to be
何もかも以前のようには見えなかった
In the glass I saw a strange reflection
店の窓に映る 奇妙な人物
Was that lonely woman really me?
その寂しい女性は 本当に私なの?
★繰返し
4番
Through the door there came familiar laughter
ドアの向こうから聞き覚えのある笑い声
I saw your face and heard you call my name
あなたの顔を見たら私の名前を呼ぶのを聞いた
Oh my friend we're older but no wiser
ああ友よ 私たちは歳を取ったけど賢くはなってない
For in our hearts the dreams are still the same
でも私たちの心の中にあるあの頃の夢は 今も変わらない
★繰返し
和訳してみて、原曲の歌詞に込められた主人公たちの気持ちが、ものすごく良く理解できる気がした。何故だろう。歳を重ねたからか。「わたしの心の中の夢は今も変わらない」っていつまでも言いたいものだ。
さて、最後に、51年前に聴いた浅田美代子のLPアルバム「赤い風船」12曲を聴いてみよう。YouTubeでは、残念ながら浅田美代子の歌は、A面で1曲、B面では2曲しか見つけられなかった。でも、B面の原曲6曲は全て見つけることができたのはラッキー。元はこんな曲だったのか〜、と感慨深い。
⚫︎浅田美代子LPアルバム「赤い風船」
(ソニーミュージックWebサイトより。さわりしか聴けないが。LP1973年5月21日 / CD1991年6月15日)
⚫︎浅田美代子LPアルバム「赤い風船」の各曲
〈A面〉
1. 赤い風船(浅田美代子)
2. 愛のキューピット(浅田美代子)
3. 愛の花咲かせるために(浅田美代子)
4. 恋はそよ風(浅田美代子)
5. 夢でいいから(浅田美代子)
6. いつかどこかで(浅田美代子)
〈B面〉
7. ネイビー・ブルー(浅田美代子)
7. ネイビー・ブルー(ダイアン・リネイ)
8. 悲しき天使(浅田美代子)
8. 悲しき天使(メリー・ホプキン)
9. レモンのキッス(ナンシー・シナトラ)
10. そよ風にのって(仏 マージョリー・ノエル)
11. 花のささやき(仏 ウイルマ・ゴイク)
12. 夢みるシャンソン人形(仏 フランス・ギャル)
⚫︎今までの「懐かしの英語の歌を読む」は、下記にまとめてあります。よろしければクリックしてご覧ください。
(1) CARPENTERS「YESTERDAY ONCE MORE」
(2) CARPENTERS 「TOP OF THE WORLD」
(3) Celtic Woman「You Raise Me Up」
(4) Rechard Sanderson 『ラ・ブーム』より「愛のファンタジー(Reality)」
(5) ABBA 「Dancing Queen」
(6) Bob Dylan 「Blowin’ in The Wind (風に吹かれて)
(7) Audrey Hepburn「Moon River」
(8,9,10) クリスマスソング 「White Christmas 」「Blue Christmas」「Silent Night」
(11) Air Supply「Lost In Love」
(12,13) Bee Gees『小さな恋のメロディ』から「Melody Fair」「First of May」
(14)「ダニー・ボーイ(Danny Boy)」
(15)「哀愁のカサブランカ」原曲
(16) Procol Harum「青い影」
(17) Celine Dion「My Heart Will Go On」
(18) Bobby Vinton「Mr. Lonely」