東京都港区の赤坂で、5年ぶりに昔の仲間との懇親会が開催されるということで、久しぶりに参加した。6月末のことである。
連日徹夜するような大変な仕事を、何年間も一緒に頑張った仲間たちだ。多くのトラブルを乗り越えて、無事事業をスタート出来た時の皆の喜ぶ顔は忘れられない。だから30年経っても、顔を合わせればすぐあの時と同じ気持ちに戻れる。2時間はあっと言う間に過ぎた。20名ほどの会だったが、とても幸せな時間だった。
さて、リタイアしてからは都心に出ることは滅多に無い。折角だから早めに出かけて、会が始まるまで、会場の近くの赤坂・六本木界隈をぶらぶら散歩することにした。
まずは、事前に目を付けておいた、六本木一丁目駅から歩いて5分ほどの『泉屋博古館東京』という美術館で「古」の世界を楽しもうと出かけた。
5分ほどと書いたが、駅からは延々とエスカレーターを上ってやっと到着する。こんな感じだ。
(左)駅の案内板 (右)東京メトロ六本木一丁目駅の北改札を出たところ。その先のエスカレーターから上って行く。
(左)1階から2階へ (右)2階から3階へ
(左)3階から4階へ (右)4階から5階。やっと地上😌
5階が地上なんて、不思議な感覚だ。「泉屋博古館東京」は爽やかな緑の中に佇んでいた。
泉屋博古館東京 (HP) の前で。場所は東京都港区六本木1丁目5-1。入館料は1,000円でした。
元々、『泉屋博古館(せんおくはくこかん)』というのは、京都市左京区にある東洋美術が中心の美術館(1960年設立)。そして今回私が見学したのは、六本木の旧住友家麻布別邸跡地に2002年に開設された「泉屋博古館"分館"」である。2021年に「泉屋博古館"東京"」と改名された。2022年にリニューアルオープンされたのでまだ新しく、都心のビル群の中のオアシスのような感じだ。展示内容は古いのに都会的で、コンパクトなのに心地よい美術館だった。
開催されていたのは、企画展「歌と物語の絵 〜雅やかなやまと絵の世界」だ。平安時代の物語を元に、主に江戸時代に描かれた「物語絵」や「歌絵」がたくさん展示されていた。古来から読み継がれてきた物語や歌が「絵」になることで、人々はより身近に物語や絵の世界を味わうことが出来たのだろう。気になった作品をいくつかご紹介したい。
三十六歌仙とは、NHK大河ドラマ「光る君へ」にも出てくる藤原公任(町田啓太)が選んだ平安時代の和歌の名人三十六人の総称である。柿本人麻呂、大伴家持、小野小町、在原業平など錚々たる人達と並んで、紫式部の曽祖父の藤原兼輔(百人一首では "みかの原わきて流るゝ泉川 いつ見きとてか恋しかるらむ" が入っている )が選ばれている。源氏物語の中でも、紫式部は曽祖父のこの歌の一部を何度も引用しているという。親心のままならなさ、子を思う親の気持ちを詠ったこの和歌は、私にも身につまされるものがあった。
人のをやのこころはやみにあらねとも
こをおもふみちにまよひぬるかな
(子を持つ親の心は闇というわけではないが、子どものことになると道に迷ったようにうろたえるものだ)
⚫︎紫式部観月図 狩野常信(江戸:18世紀)
美術展ナビより
NHK大河ドラマ「光る君へ」に何度も出てくる「近江石山寺」に紫式部が山籠した時のエピソードが題材だ。湖水に映る十五夜の月を見て「源氏物語」を着想し、須磨、明石の巻から描き始めたという伝説に基づいて描かれたそうだ。ドラマの配役を頭に浮かべながら眺めていると時間を忘れてしまう。
⚫︎源氏物語図屏風(江戸:17世紀)
企画展パンフレットより
源氏物語は全部で54帖あるが、そのうちの12帖が描かれている。物語の中のスキャンダラスな場面が選ばれているらしい。ちなみに、描かれているシーンは、桐壺(元服する源氏)、箒木(紀伊守邸に宿泊、酔い潰れた従者を残し、 紀伊守の後妻空蝉の様子をうかがう源氏)、空蝉(つれない態度の空蝉が囲碁に興じるのを隙見する源氏)というような感じだ。
ちょうど『正訳源氏物語 本文対照 第一冊(桐壺・箒木・空蝉・夕顔・若紫), 中野幸一著』を読んでいたところだったので、とてもリアル感があり、生身の人間として描かれているように感じて見入ってしまった。
他にも、竹取物語絵巻(江戸17世紀)や伊勢物語図屏風 宗達派(桃山〜江戸17世紀)などを見ることができた。
がしかし、この辺りでお腹が空き過ぎて、もうヘロヘロ。時計を見るといつの間にか13時半になっていた。腹が減っては戦はできぬ。美術館併設のカフェ『HARIO CAFE』でランチを取ることにした。幸い5分ほどの順番待ちで入ることができ、しかも窓際の席である。
木立の中の「HARIO CAFE」
フルーツサンドイッチセット(+カフェオレ)。1,800円だが入館チケットで10%割引👍
腹一杯食べたかったが、残念ながら小さなフルーツサンドイッチしかなかった。しかも物価高のせいで高い😳 でも、味は絶品。席から見える緑の景色を眺めながら、ゆったりと休憩することができた。
ランチを食べ終わったものの、会の開始時間まではまだだいぶ間がある。
「そうだ、東京ミッドタウンに行こう!」
東京ミッドタウンは六本木交差点の近くにあり、10年以上前に仕事で何回も訪ねたことがある。地図で調べたら近そうだし、公園もあるようなので向かってみた。
六本木一丁目駅から上がってきた道を逆に戻れば簡単にたどり着くはずと思い、エスカレーターを下って行っただけなのに、何と迷ってしまった。地下鉄を超えることが出来ないのだ。
(左)地図で見ると簡単に行けそうな気がするが・・ (右)上ってきたエスカレーターを逆に降りてゆく・・
最近は新宿も渋谷も立体交差の構造になっていて、初めてだと絶対迷子になる。Googleマップもビルの谷間やビル内ではGPS電波が届かないので、自分の居場所がわからなくなってしまう。散々迷ったが、何とか地下鉄線路を超えて地上に出ることができた。
しかし、もし今東京直下地震が起きたら、どうするのだろう。パニックになりそうだ。やっぱり私はこのような未来的な都市には住めないなぁと、改めて実感した。
さて、地上に出て、自分の位置がわかればこちらのものだ。都心の「今」を眺めながら東京ミッドタウンを目指した。
建築中の高層ビル(左)もあれば、解体中のビル(右)もある。東京にこんなにビルはいるのかな?
(左)久しぶりに見た公衆電話ボックス。昔はPHS基地局が設置されていたが、今はFree Wi-Fiが付いている。歴史の変遷を感じる。
(右)目指す東京ミッドタウンが見えてきた。左側に見えるのが麻布警察署。さすが素敵なデザインだ。道沿いのレストランには外国人の客が多かった。この辺りは大使館だらけだからかな。
六本木通りと外苑東通りの交差する六本木交差点。その北側に『東京ミッドタウン』はある。
六本木交差点の角には、大昔に待合せでお世話になった「アマンド」がある。そう言えば交差点近くには「マハラジャ」というディスコもあったっけ。両店とも時代に合わせて生き残ってきたのはすごいと思う。
歩いて20分の予定が40分もかかってしまったが、ようやく目的地に到着した。いつ来てもその超高層ビルの高さにびっくりする。真ん中の高いミッドタウン・タワーの高さは248.1mだ。それでも、高さ330mの麻布台ヒルズ森JPタワー、高さ266mの虎ノ門ヒルズステーションタワーに次いで、東京都内で3番目の高さなのだ。
ここは元々は防衛庁の敷地だった。左から、ミッドタウン・ウェスト、ミッドタウン・タワー、ミッドタウン・イースト。ホテル「ザ・リッツ・カールトン東京」、サントリー美術館やオフィスなどが入っている。
さて、ミッドタウン・タワーの向こう側に公園があるというので、まっすぐ進んでみた。
平日ならもっと混んでいるかもしれないが、今日は土曜日。ゆったりした時間が流れている。
ミッドタウン・タワーの右横を通り抜けて進むと、まさかのビルの谷間のオアシス『檜町公園』が目の前に広がった。
地上だと思って真っ直ぐ進むとそこは2階。ここら辺は段差が大きいのだろう。階下に緑の森が見えた。
檜町公園を歩き始めたが、ここが都心とはとても思えない。遠くのビルが見えなければ、奥多摩にでもいるような感覚だ。バシャバシャ撮った写真を見て欲しい。
公園というより庭園だ
遠くに見えるビルで、ここは都心なんだと気付かされる。
怪我しないように気をつけてね!
子どもと水遊びをしている親子や広場で遊んでいる家族も。未来都市のようなところには住めないなぁと言ったばかりだが、東京の都心にはこのような公園が多くて癒されるのも事実だ。緑を残すことで何とか心のバランスが取れるのかもしれない。
あっ、鴨さんだ!
大きな池のほとりには可愛い鴨🦆が!
人が座っているベンチのすぐそばで、ゆったり休んでいた鴨のすぐ横に、すずめが飛んできたのでパシャリ。どんな会話しているのかな?
20年以上も昔、名古屋に単身赴任していた時に、職場の仲間と一緒に彦根城までドライブしたことがある。その時に庭園の池に鴨がたくさん泳いでいたのを見て、同僚が「美味しそう〜!」と叫んだことがあった。いやいやそれはないだろう、可愛いとは思うが、美味しそうなんて・・・・と、当時憤慨したことを思い出した。鴨は可愛いんだよ。
懇親会が始まるまであと40分くらいになったので、会場までゆっくり歩き、最後の時間調整で近くの小さな公園に寄ってみた。遠くにお城のような建物が見えたので構えたら、何かが飛んでくるのが見えたので慌てて撮った写真がこれだ。
飛んでいる鳥(鳩?)がちょうど写っている。背後のお城のような建物は、ビルの横を通った時に見たらラブホテルだった。こんなところにあるんだ、とびっくりだ。これも都会のリアルな現実だ。
このあと、赤坂の懇親会会場に向かった。暑い中長い時間歩いてきたので、冷たい飲み物(ワイン🍷やビール🍺)が美味しかったこと。30年前の昔話に花を咲かせたり、現在の様子を互いに聞き合ったりして、楽しい2時間を過ごした。心残りは、話に夢中で料理をあまり食べないうちに、締めの時間が来てしまったことだ(笑)
仲間と別れを告げ、これこそ都会的!な姿の「日枝神社」大鳥居を横目に(お参りする元気はもう無い)帰路についた。長かったが楽しい一日だった。
日枝神社では正月に安全祈願を行ったことがある。背後に見えるのは、ザ・キャピトルホテル東急だ。
さて、今日は六本木の美術館で「古」の世界に触れたり、六本木〜赤坂のぶらぶら散歩で東京都心の「今」を実感したり。
昔の仲間に会えただけでなく、六本木・赤坂の「古」と「今」を十二分に楽しんだ、有益な一日だった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。