『マー坊』というのは、結婚してから妻に初めて贈った犬のぬいぐるみのことである。
妻は、結婚まで地元を一度も出たことが無かったので、東京には知っている人がいない。アパートの人たちはみんな良い人だったが、まだ子供がいないので、子連れのお母さんたちの話の輪に入るのも中々難しい。頼るべき夫は毎日仕事で遅いので、帰るまでの話相手がいなくてさびしがっていた。
結婚して最初の夫婦のイベントが、1984年のクリスマスだった。プレゼントに何を渡そうか散々悩んだ末に、少しでも慰めになるものをと選んだのが、犬のぬいぐるみだった。「ぼくの代わりだよ」と言って渡した。さびしい時に自分の分身として、側にいて妻を支えて欲しいと思ったのだ。
当時の『マー坊』の写真がこれである。年月を経てボロボロになってしまい、今は押入れの奥に大切にしまいこんである。
最初に家族になった『マー坊』
後で来た『ミーミー』と一緒に
新婚当時、銀座は住まいからも職場からも近かったため、色々な思い出が、あちこちにある。
先月、用事で銀座に出た時に、ふと、妻に最初のプレゼントを買ったのはどこだったかな？と頭に浮かび、必死に思い出そうとした。「銀座三越だったっけ？いや、たくさんぬいぐるみがあったからデパートじゃないよな。うーん。」その時、「そうだ！銀座博品館だったかも！多分そうだ！」と思い出し、確信半分で、銀座8丁目の博品館に向かった。
緊張しながら、２階ぬいぐるみのフロアへの階段を上る。
なんと、そこには見渡す限りのぬいぐるみがいた。ひょっとして、あの時の『マー坊』と同じぬいぐるみがあるかもしれない！と、急いで探してみると、いた！いてくれた。
久しぶりに会えて、そこに居てくれて、39年前を思い出して涙が出そうになった。このぬいぐるみは、最初に男の子の『マー坊』のあと、女の子の『ミーミー』、最後はうさぎの女の子『うたたん』の3匹がわが家の家族になった。それぞれに、思い出がある。
お互い、死んだら『マー坊』は妻のひつぎに、『ミーミー』と『うたたん』は夫のひつぎに入れようね、と約束をしている。
この子が『マー坊』そっくりだった
それにしても、この博品館。こんなにもぬいぐるみが並んでいる。
２階フロアをぐるぐる回っていたら、オルゴールのコーナーを見つけた。「あっ、オルゴール買ったのもここだったかも！」と思い出した。
新婚時代の慎ましい生活の中で、毎月給料日の日だけ夫婦でお食事に出かけたのだが、そのうちの一つがこの博品館６階の『シャペロン・ルージュ』というフレンチレストランであった。残念ながら今は違う店舗が入っているようだ。
新婚時代のクリスマスや月1回だけの外食については、またどこかで思い出を書いてみたい。
銀座博品館、正式には「博品館TOYPARK 銀座本店」。この日は２階フロアしか見ていないが、名前の通り、ビル全体が「おもちゃ広場」になっているので、大人も子供も楽しめるだろう。
可愛いぬいぐるみが大勢待っているので、プレゼントを買いに、出会いに来られてはいかがだろうか。
⚫︎博品館TOYPARK ホームページhttps://www.hakuhinkan.co.jp/toypark/
