武蔵野つれづれ草

リタイア後を楽しく!と始めた凸凹夫婦の面白ブログ。見たこと、感じたこと、残したいことをつづります。

🙋‍♂️『のだめ』クラシック音楽辞典 🎶 〈第1巻〉


先日妻が『のだめをリスペクト』という記事で、ドラマ「のだめカンタービレ」の裏話をご紹介したが、そのあとその原作を二人で読み始めたら、「カルビーかっぱえびせん」状態となってしまった。もう、やめられない、とまらない。我が家は、今「のだめ」の再ブームである。

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図書館から新装版(全13巻)を1巻ずつ借りて第6巻まできたのだが、何度も繰り返して読みながら、二人して大笑い。食卓では面白いシーンの話で盛り上がっている。

漫画なのに、頭の中では登場人物が喋っている。そして演奏も聴こえてくる🎶・・ような気がするが、残念ながら聴こえてはこない。YouTubeで音楽を探して聴くが、本を返した途端に、どの場面でどんな楽曲だったか忘れてしまう。

そこで、「のだめ」の中のクラシック音楽をその場面と共に記録して、聴きたい時にいつでも気軽に参照できる辞典ぽいものを作ることにした。ただし、原則として、漫画に曲名が書いてある楽曲だけに絞った。また、対象範囲は、特に面白くて愛着のある「桜ヶ丘音楽大学時代(第1巻〜第5巻)とし、1巻分ずつ合計5回に分けた。

それでは、『のだめカンタービレ』の中のクラシック音楽、 第1巻(Lesson1〜12)から、まずはスタート。

第1巻では合計9曲でした。

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【1】ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ長調作品27-2〈月光〉第3楽章

【場面】


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《Lesson 1》
桜ヶ丘音楽大学ピアノ科3年の千秋真一は、指揮科の早川がドイツに留学すると耳にした。飛行機恐怖症で留学出来ない千秋が、自分の将来に絶望しながら弾く課題曲がこのベートーヴェンのピアノ・ソナタ〈月光〉である。担当の江藤耕造先生(ハリセン)にやる気がないと怒られ、逆ギレした結果生徒を首になり、選抜学生コンサートの推薦までもがダメになってしまう。

【解説】
1801年作曲。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン30歳。第13番と対になって作品27として発表された。ピアノの弟子の14歳伯爵令嬢、愛するジュリエッタ・グイチャルディに献呈。ベートーヴェン自身が付けた題名は「幻想曲風ソナタ」。緩やかな第1楽章、軽快な第2楽章、急速な第3楽章の構成となっている。

【演奏】
⚫︎仲道郁代 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番〈月光〉第3楽章(7分30秒)
(千秋の絶望的な気持ちを感じさせるような、うまい選曲だと思う)

⚫︎中村紘子 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番〈月光〉全楽章(14分27秒)
(00:07第1楽章、07:00第2楽章、09:07第3楽章。結婚前の長野のリサイタルで彼女が聴いた曲。
👬〈マッチの玉手箱〉第9回 “ 春の3連休(前半) ”編 - 武蔵野つれづれ草」参照〉

 

【2】ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13〈悲壮〉第2楽章

【場面】

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《Lesson 1》
未来に絶望した千秋は、元恋人で声楽科3年の多賀谷彩子にも振られ、自暴自棄となって飲み過ぎ、自分の部屋の玄関の前で寝てしまう。そこを通りかかったピアノ科2年の野田恵(のだめ)に助けられ、翌日朝、のだめのゴミ部屋で目覚める。その時、ゴミの中で美しく響くピアノの音が聞こえる。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番だ。カプリチオーソ(気ままに気まぐれに)、カンタービレ(歌うように)。これが千秋の野田恵との出会いだった。

【解説】
1798~1799年作曲。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン27~28歳。〈悲愴〉という標題は初版譜の表紙に既に掲げられている。ベートーヴェンの発案であったのか否かはわからないが、作曲者本人の了解はあったはずだ。

【演奏】
⚫︎平尾有衣 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番〈悲愴〉第2楽章(5分05秒)
(ゴミだらけの部屋でピアノ・ソナタ〈悲愴〉、というアンマッチがこの漫画の面白さを際立たせている。目覚めた後の千秋の行動も笑える)

⚫︎ダニエル・バレンボイム ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番〈悲愴〉全楽章(20分18秒)
(0:19第1楽章、9:46第2楽章、15:11第3楽章)

⚫︎《おまけ1》 マウリツィオ・ポリーニ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番〈熱情〉ヘ短調作品57 (24分18秒)
(〈月光〉〈悲愴〉と来たら、やはり3曲目は〈熱情〉。第5巻マラドーナ・ピアノ・コンクール本選で、江藤先生門下の4年生が弾く曲でもある。0:21第1楽章、9:25第2楽章、15:15第3楽章)
Beethoven - Piano Sonata No. 23 "Appassionata" (Pollini) - YouTube

⚫︎《おまけ2》CANACANA ベートーヴェンエリーゼのために(3分10秒)
ベートーヴェン39歳の作曲。エリーゼとは一体誰だ?諸説あるが、まだ定説は無い。謎だ。
関係ないけど、シュトレーゼマンの敏腕マネージャーの名前もエリーゼだ)
エリーゼのために/ベートーヴェン/Für Elise(For Elise)/Beethoven/ピアノ/Piano/弾いてみた/CANACANA - YouTube

 

【3】モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448(375a)

【場面】


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《Lesson 3》
新しく千秋の先生となった谷岡肇先生(のだめの先生でもある)から出された最初の課題は、のだめと連弾しなさいというものだった。その連弾の曲が、モーツァルト「2台のピアノのためのソナタ」だ。読譜の苦手なのだめに、千秋自らピアノを弾いてみせ、耳で覚えさせる。先生の前での連弾では、自由奔放に弾くのだめに、千秋は合わせながら、身震いするほどその演奏に感動する。

【解説】
1781年作曲。ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト25歳。ザルツブルグからウィーンに定住を決意した頃の作品。モーツァルトの女性の弟子ヨーゼファ・バルバラ・アウエルンハンマーと二人で弾くために作曲されたらしい。

【演奏】
⚫︎アルトゥール&ルーカス・ユッセン兄弟 モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ(21分05秒)
(ユッセン兄弟は、オランダで高い人気を誇るピアニスト。2人の演奏は抜群に調和が取れていて聴きごたえがある)

⚫︎《おまけ3》ラン・ジア モーツァルト:きらきら星変奏曲ハ長調 K.265(11分53秒)
( 正式にはフランス歌曲『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』による12の変奏曲。高校の音楽で初めて聴いた時にすごく感動して、ギターで色々チャレンジしたことを思い出す)
Ran Jia plays Mozart Twelve Variations on "Ah vous dirai-je, Maman", K. 265/300e - YouTube

 

【4】ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番〈春〉ヘ長調作品24

【場面】

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《Lesson 4》
ヴァイオリン科2年の峰龍太郎から、試験のためのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番〈春〉の伴奏(実は千秋に断られた)を頼まれたのだめ。上手く弾けないのだめを千秋が猛特訓する。
《Lesson 6》
しかし、試験の当日、のだめが風邪をひき、急遽、千秋が伴奏することになった。一発勝負だったが、メチャクチャな峰の演奏に千秋は上手く合わせ、峰は何とか合格できた。

【解説】
1800~1801年作曲。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン30~31歳。幸福感に満ちた明るい曲想から『春』や『スプリングソナタ』という愛称で親しまれている。ベートーヴェン自身のヴァイオリン演奏は技術的に稚拙だったので、ソナタの旋律リズムはピアノのものが中心になっているらしい。

【演奏】
⚫︎庄司紗矢香 ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番〈春〉(24分50秒)
(00:05第1楽章、08:42第2楽章、15:10第3楽章。確かにヴァイオリン・ソナタでありながら、ピアノの比重が大きい気がする)

 

【5】ベートーヴェン交響曲第1番ハ長調 作品21

【場面】
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《Lesson 4》
千秋はのだめが帰ってこない寂しさを紛らわすために、子どもの頃から指揮者の師と仰ぐヴィエラ先生のCD(ベートーヴェン交響曲第1番)を聴きながら寝てしまう。

【解説】
1799~1800年作曲。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン29~30歳。1800年ウィーンで初演されたが、管楽器が多く活躍するスタイルが革新的だったため、まるで「吹奏楽のようだ」と当時の評価は芳しくなかったようだ。

【演奏】
⚫︎フランクフルト放送交響楽団 ベートーヴェン交響曲第1番(28分36秒)
(00:37第1楽章、09:56第2楽章、17:37第3楽章、21:18第4楽章。私には初めての曲。でも、ピアノ・ソナタ〈悲愴〉のすぐ後にこの曲が作曲され、それから25年を経て第9が作曲されたんだな〜、などと思いながら聴くと味わい深い)

 

【6】モーツァルト:オペラ〈魔笛〉K. 620「夜の女王のアリア」

【場面】
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《Lesson 5》
千秋の元恋人の声楽科3年の加賀谷彩子は、オペ研の次の公演でやる、モーツァルトのオペラ〈魔笛〉の「夜の女王」役を、ライバルとも思っていなかった別の女性に奪われてしまう。なぜだかわからない彩子は千秋を誘ってやけ酒を飲むが。。

【解説】
1791年作曲。ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト35歳。台本は興行主・俳優・歌手のエマヌエル・シカネーダーが自分の旅一座のために書き、当時仕事がなく生活に困っていたモーツァルトに作曲を依頼した。第2幕の「夜の女王」の2つのアリア(No.4、No.14)の、コロラトゥーラ(細かく速い音符の連なりを用いて装飾を施し、まるで声を転がすように歌う)はよく聞いたことがある。

【演奏】

⚫︎英国ロイヤルオペラハウス モーツァルト:オペラ〈魔笛〉第2幕「夜の女王」のアリア(5分21秒)
(ドイツ語&日本語の歌詞付き。02:15有名なアリアの部分でコロラトゥーラが聞ける)

⚫︎《おまけ4》ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 モーツァルト:歌劇フィガロの結婚 K.492(全曲)(3時間1分55秒)
(序曲と4幕からなるオペラ。日本語字幕付きなので面白い)
W. A. モーツァルト:フィガロの結婚 (ベーム, 1976年)【全曲・日本語字幕】 - YouTube

 

【7】ベートーヴェン交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」作品125 第2楽章

【場面】
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《Lesson 8》
声楽科3年のティンパニ奥山真澄は、千秋が大好きだ。峰にそそのかされて、Aオケの練習で千秋にいいところを見せようとするが、大失敗してAオケを首になってしまう。この時の練習曲が、このベートーヴェン交響曲第9番だ。

【解説】
1824年作曲。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン54歳。堂々とした第1楽章、疾風怒濤の第2楽章、美しい第3楽章、有名な第4楽章「歓喜の歌」。第4楽章は独唱および合唱を伴って演奏され、歌詞にはシラーの詩『歓喜に寄す』が用いられている。

【演奏】
⚫︎ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団 ベートーヴェン交響曲第9番 第2楽章(12分00秒)
( ティンパニ協奏曲の異名を持つほどティンパニが大活躍する第2楽章。聴いていて爽快だ)

⚫︎シカゴ交響楽団 ベートーヴェン交響曲第9番 全楽章(1時間21分23秒)
(01:40第1楽章、19:44第2楽章、35:40第3楽章、52:14第4楽章。私は第3楽章の穏やかで心が落ち着く感じが好きだ。第4楽章の合唱の歌詞はドイツ語で歌われ、英語訳付きとなっている)

 

【8】マーラー交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲

【場面】
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《Lesson 11》
世界的に有名なシュトレーゼマンが、突然桜ヶ丘音楽大学に現れ、指揮を教えることになった。千秋は、昔彼が指揮したマーラー交響曲8番を聞いた時の衝撃を思い出して、ピアノ科から指揮科に転科しようと決心する。しかし、シュトレーゼマンからは拒否されてしまう。

【解説】
1906年作曲。グスタフ・マーラー46歳。マーラー交響曲は11曲あるが、この8番は、演奏規模の膨大さから『千人の交響曲』の名で広く知られている。マーラーの自作初演演奏会は生涯最大の成功を収めたそうだ。第1部:賛歌「来れ、創造主なる聖霊よ」と第2部:ゲーテファウスト 第二部』最後の場、からなっている。

【演奏】
⚫︎ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 マーラー交響曲第8番 「千人の交響曲」(1時間24分38秒)
( 01:30第1部、25:50第2部。マーラー自筆の手紙の中に、この曲の説明として「 大宇宙が響き始める様子を想像してください。それは、もはや人間の声ではなく、運行する惑星であり、太陽です」と書いてある。まさにその通りの壮大な曲だ)

⚫︎《おまけ5》ルツェルン祝祭管弦楽団 マーラー交響曲第5番嬰ハ短調(1時間13分43秒)
Mahler - Symphony No.5 - Abbado - Lucerne Festival Orchestra 2004 - YouTube
マーラー絶頂期の作品。第4楽章「アダージェット」は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の1971年の傑作映画「ベニスに死す」のテーマ曲として一躍有名になった。0:55第1楽章、13:36第2楽章、28:20第3楽章、45:17第4楽章、53:49第5楽章)

 

【9】ベートーヴェン交響曲第7番イ長調作品92

【場面】
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《Lesson 11-12》
シュトレーゼマン特別編成オーケストラの指揮を、急遽千秋がすることになった。シュトレーゼマンの具合が急に悪くなったからだ。この時初めて千秋が指揮する曲がこのベートーヴェン交響曲第7番である。千秋は持ち前の才能を発揮して指揮するが、厳し過ぎて失敗してしまう。しかも、師匠であるシュトレーゼマンにダメ出しまでされてしまう。

【解説】
1811~1812年作曲。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン41歳。リズム重視の曲想から現代においても人気が高く、演奏される機会も多い。のだめカンタービレでも、この曲がメインテーマであり、ドラマでは第1楽章と第4楽章が流れている。

【演奏】
⚫︎ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 ベートーヴェン交響曲第7番(42分15秒)
00:05第1楽章、14:40第2楽章、24:25第3楽章、34:05第4楽章。お恥ずかしい話だが、今回初めて第7番の全楽章を聴いた。のだめテーマ曲の第1楽章もいいが、厳粛で哀愁を帯びた第2楽章も気に入った)

 

「のだめ」の好きな方やクラシック音楽の好きな方は、この記事を辞典がわりに使ってくだされば光栄です。

最後までお聴きいただき、ありがとうございました。