武蔵野つれづれ草

リタイア後を楽しく!と始めた凸凹夫婦の面白ブログ。見たこと、感じたこと、残したいことをつづります。

🙋‍♂️ ロシア・ウクライナ戦争の背景と諸外国との関わりを多角的視点から解説した本を紹介。日本の進むべき道は?

 

2022年、全世界を揺るがせた「ロシア・ウクライナ戦争」も来月2月24日で丸1年となる。今回はこの戦争について解説した本を紹介したい。

その前に・・。

●読書の醍醐味とは?

私は書店や図書館をぶらぶらするのが好きだ。
横積みの本や手書きPOPを見れば世の中の動きが何となくイメージ出来るし、偶然手に取った本から未知の知識・世界への入口に佇むことが出来る。

知識や教養が身につくことは勿論のこと、自分以外の人生を生きたり、訪ねたことのない世界各地を旅行したり、歴史的な事件の現場に身を置くことも出来る。人生の指針を得ることもある。

ただ、本棚の容量は無尽蔵ではないので、最近は図書館から借りて読むことがほとんどだ。ただ、話題の新刊は予約が一杯ですぐには読めず、辛抱強く(半年〜1年)待たなければならないのが難点(笑)。🙋‍♀️も本が大好きなので、我が家にはたいてい図書館から借りた本が数冊は置かれている。

既に🙋‍♀️は「山口百恵 赤と青とイミティション•ゴールド」という本を昨年11月にこのブログで紹介している(この本は実に面白い!)。私も、折角ブログという発信の場ができたので、最近読んだ本や過去に読んだ本の中から、時々紹介してみようと思う。

●今回は2冊の本を紹介

さて前振りが長くなってしまったが、今回は「ロシア・ウクライナ戦争」に関し、昨年4月に急遽出版された本2冊を簡単に紹介したい。ウクライナとロシアの関係のみならず、欧米、中国、インド等との関係が具体的に解説されており、日本の未来を考えるための一助になる大変有意義な本である。


❶日本がウクライナになる日
(河東哲夫、CCCメディアハウス、2022年4月)

f:id:musashino007:20230108213407j:image

本の題名にドキッとして手にした本。

著者は、外務省東欧課長、ボストン総領事、在ロシア大使館公使、在ウズベクスタン、在タジキスタン大使等を歴任し、ロシアを間近で見てきた1947年生まれの元外交官。現在は外交評論家、作家をしている。

ロシアとウクライナ戦争に関して、地政学、歴史、経済といった多角的視点から「複雑なロシアの事情」を元外交官らしくズバッと解説している。ご自身の考えもかなり書かれているので、本当かな?と思う面もあるが、結構面白い。

〈目次〉「日本がウクライナになる日」

はじめに
第一章 戦争で見えたこと
 プーチン独裁が引き起こす誤算
第二章 どうしてこんな戦争に?
 ウクライナとは、何があったのか
第三章 プーチンの決断
 なぜウクライナを襲ったのか
第四章 ロシアは頭じゃわからない
 改革不能の経済と社会
第五章 戦争で世界はどうなる?
 国際関係のバランスが変わる時
第六章 日本をウクライナにしないために
 これからの日本の安全保障体制
あとがき
 学び、考え、自分たちで世界をつくる


私にとっては殆どの部分が「えっ、そうだったの?」という感じだった。例えば、
⚫︎1991年12月、ロシア、ウクライナベラルーシのトップ3人の密談で決まったソ連の崩壊が話の発端
⚫︎「スラブの本流はロシア」というのは歴史の誤認
⚫︎ロシアは資源は豊かだが、ロシア企業は競争力が弱く、サプライチェーンも不備。ロシアは「植民地」が必要な経済力しかない
⚫︎ウクライナは今からNATOには入れない 等


著者の「あとがき」に、日本(人)の課題が何点か述べられている。

⚫︎日本の政府・社会は「近代国家」という巨大マシーンを使いこなせるほど熟していない
⚫︎日本では政府と国民の間の一体感が少ない
⚫︎アメリカやヨーロッパ諸国では当たり前のことを、皆がもっとシェアする必要がある
⚫︎今の日本を覆っている停滞感を何とかしないといけない
⚫︎社会全体、今の安定にどっぷりつかり、エラーをしないこと、目立たないことばかり考えてやっている。


私も同感である。2014年2月のクリミア併合の時はまだ他人事で、積極的に知ろうともしなかった。この本を読んで、自分自身、改めて世界の歴史や社会情勢をきちんと知らないのだと痛感した。もっと勉強して自分の頭で考えねば。
ウクライナ・ロシア戦争における国際情勢を素早く掴みたいと思った方には是非読んで欲しい。

 

ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略
(遠藤誉、PHP新書、2022年4月)

f:id:musashino007:20230108213420j:image

1冊だけだと、情報や見方の偏りがある恐れもあるので、違った観点で選んだ2冊目。

著者は、1941年中国吉林省長春市で生まれ、国共内戦を決した「長春食糧封鎖」を経験後12歳で日本に帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員•教授などを歴任し、現在は、中国問題グローバル研究所の所長。ウクライナでのロシア軍の蛮行を目にして一気に書き上げたそうだ。80歳の女性学者である。

中国の習近平は一体どのような姿勢でロシアのプーチンに接し、プーチンが引き起こしたウクライナ戦争にどう対処しようとしていくのか。混沌とした国際情勢を、中国を中心に、社会学者らしく読み解いた本である。この本も知らなかったことばかりで、今回の侵攻や各国の国家戦略についての見方が大きく変わった。

〈目次〉「ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略」

はじめに
第一章 中露間に隙間風
 ロシアの軍事侵攻に賛同を表明しない周近平
第二章 周近平が描く対露『軍冷経熱』の恐るべきシナリオ
第三章 ウクライナ軍事侵攻は台湾武力攻撃を招くか?
第四章 周近平のウイグル太陽光パネル基地」戦略とイーロン•マスク効果
第五章 バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛
第六章 ウクライナを巡る「中露米パ」相関図
 際立つ露印の軍事的緊密さ
おわりに
 戦争で得をするのは誰か?

学者として、膨大な資料・データを分析し、以下のような論点で解説している。
⚫︎そもそもウクライナ問題の遠因を創り上げたのは誰か?バイデンが副大統領時代に行ったウクライナ工作とは何か?
⚫︎2021年12月7日にバイデンはプーチンとの電話会談で「もしウクライナで紛争が起きても、アメリカは米軍を派遣するつもりはない」というメッセージを、何のために発したのか?
⚫︎中国がソ連崩壊後のウクライナ軍事技術や貿易上で緊密な関係になったのは何故か?ウクライナを将来どうしたいのか?
⚫︎中国の「一帯一路」の真の目的は何か?欧州にラブコールするのは何故か?中近東やアジア諸国との関係強化で何を狙っているのか?
⚫︎インドのモディ首相とプーチンとの仲は何故蜜月か?また、習近平とも非常に仲が良いのは何故か?
⚫︎戦争で得をするのは誰か? 米国産液化天然ガスや武器の欧州輸出が急増しドル高となったバイデンのアメリカか?ロシアとの輸出入で得をしている(欧州向けロシア産天然ガスを格安で輸入等)習近平の中国か?

著者は最後にこう書いている。

どんな方法にせよ、いずれにせよ日本人は「自国を守る方法」を真剣に論議しなければならないところに追い込まれたのは確かだろう。戦争をしないことを大前提として「軍事力を持っている中立国」を目指すしかない

「日本国の安全保障の未来」については、色々な考え方がある。著者の意見も含め、我々国民も参加して大いに議論すべきだと思う。

私は、日本の国力を増大させていくために、少なくとも50年くらいの長期国家戦略を策定し実行していくことがとても重要だと思う。悔しいが、中国には2049年までの「100年マラソン」と呼ばれる長期国家戦略があり、着々と実行中と言われている。

日本も30年前は先進国だったが、今の日本は「衰退途上国(経済成長率世界157位)」であることを日々の生活の中で実感しているし、新型コロナの国内の対策でも心底痛感した。

改めて私が言うまでもないが、抜本的に教育を見直し将来の日本を引っ張ることの出来る人材の育成を図ること、食糧・衣料・エネルギー等の自給率を大幅に高めること、基礎研究、医薬、半導体、生産、IT等技術力を世界最高レベルまで引き上げること、が大事ではないだろうか。さすがに全分野は無理だろうが、少なくとも核心部分は押さえたい。

 

実現するためには、国民全員が自分の問題として知恵を絞らないといけない。私も含めて頭が固くなっている人」は「意欲と才能のある若手」に未来を託す勇気必要だ。他国に頼らなければ何にも出来ない存在感の薄い現在の日本を、他国から頼られ尊敬される日本に何としても変えたいし絶対目指すべきだと思う。それがひいては日本の安全保障につながるのではないだろうか。

 

ウクライナ・ロシア戦争に関する本は、他にもたくさん出版されている。今回、著者の異なる2冊の本を読むことにより、ロシア、ウクライナを囲む各国の国際情勢の概略に、より広く深く触れることができた。是非、複数冊を読むことをお薦めしたい。

 

JAFMate 2023年冬号の〈幸せってなんだろう〉というコラムの中で、ウクライナから日本に避難してきた17歳の少女ズラータ・イヴァシコワさん「当たり前の幸せ」と題してこう書いている。

(前略)
“変化”は突然やってきました。ただし、それは私が想像していた類いのものではなく、不気味な空襲警報と爆撃音、死と隣り合わせの恐怖とともにやってきたのです。自分の人生が戦争と関わることになるなど、考えたこともなかった私は、今日一日の命があることの大切さを、初めて身をもって痛感したのでした。
(中略)
今この瞬間、瞬間を、精一杯自分を出し切って生きる。それができたならもう十分。それ以上に望むことなどありません。それが私にとっての幸せです。そもそも、生きていることそのものが「何ものにも代えがたい最大の幸せ」なのです。今の私は心からそう思っています。

(JAFMate 2023年冬号より)


この戦争が早く終結し、ウクライナ国民に平和な日常生活が戻るよう、強く祈りたい。そして、タモリさんが昨年末の〈徹子の部屋〉で語ったという「新しい戦前」とはならないように、国同士の悲惨な争いの無い平和な地球にするにはどうしたら良いのか、一人の国民として考えていきたい。